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対案・代案をルール化する 「否定語批評家症候群」の解決策



 

対案・代案をルール化する 「否定語批評家症候群」の解決策

松田智生(三菱総合研究所・主席研究員)

事業構想を阻む壁は社外だけでなく実は社内に多々存在する。リスクを過剰に危惧する管理部門、意思決定出来ない役員層、過剰な上下関係のしがらみ等。本稿では「職場の不条理症候群」を紹介し、チェンジ・リーダーとしての解決のヒントを提示したい。

第1回【否定語批評家症候群】

論理的に否定するのが得意な批評家が蔓延する現象。対案・代案のルール化が解決の鍵。

否定語批評家症候群とは、事業構想や新たな挑戦に対して論理的に否定や批判をするのが得意な社内批評家が蔓延し、事業構想家のモチベーションを下げる現象である。

この否定語批評家の特徴は、「否定・批評は得意だが、実は代替案や新たな発想を持ち得ていない」ということだ。

事業構想に対して、「私の経験では出来っこない」、「他の部署と摩擦を起こすからダメだ」といった「否定語」を多発する上司がいる。確かにリスクをヘッジしつつ、ある程度の睨みをきかせる管理は必要だ。しかし、否定語を乱発している部長の下では、事業構想は育たない。

「イノベーションを起こせ」、「自由闊達な意見を」と社内では散々号令をかけながら、実際は「してはならない」、「言語道断」という否定語の乱発という皮肉が多々ある。こうした職場は、「ミスはしてはいけない」、「新規事業もやるだけムダ」、「余計なことせずに目の前の仕事だけこなそう」という縮み志向になり、事業構想どころではない。

そして、「出口は何だ?」と聞いてくる上司が多い。これは答えやゴールが明確な世界で成功してきた人にありがちな質問だが、事業構想では出口以上に大切なのは「入口」である。つまり入口とは、事業の理想像や他とは差異化された切れ味鋭いコンセプトである。幾ら儲かるかの出口に拘りすぎると構想は小さくまとまってしまう。入口を徹底的に先鋭化することが出口につながるのである。

「俺の経験では絶対無理だ」という上司は、過去の延長でしか物事をみれない、単に自分が挑戦してこなかったか、出来なかったことの証である。

さらに問題なのは、否定語批評家上司に追従するミドル層である。彼らは上司に尻尾を振ってさらに批判的な発言を繰り返す。しかもそれが論理的なのでたちが悪い。この追従ミドル層が、「あいつは理論派」だとか「あいつは脇が甘くない」と否定語上司に重用されると悪循環をもたらす。冷静に考えてみれば、幾ら批判的な理論を語っても、事業構想は進化もせず、イノベーションも起こらないのである。

また、「それはいかがなものか?」と言うだけの「いかがなものか症候群」もある。疑問を呈するだけで、新たなアイディアを出さない「いかがなものか?」という言葉は、英語で意訳すれば、「I have no idea」とほぼ一緒である。

「対案・代案ルール」

では、否定語批評家症候群を変えるにはどうしたらよいか?解決のヒントは何か?

事業構想家たるリーダーは、その上司や同僚を変えることは出来ないが、実はちょっとした気づきやアイディアで現状を変えることが可能である。それは対案・代案ルールだ。会議の冒頭で、相手の意見を批判・批評は結構だが、「必ず対案や代案を出す」というルールにするのだ。「否定は分かりました。では、あなたの対案や代案は何ですか?」を明確に示させることだ。そうすれば否定語ばかりの上司や、論理的な批判や疑問を繰り返す追従ミドル層も、対案・代案志向に変わらざるを得ない。例えばこのような流れだ。

否定語部長: 事業構想の趣旨は分かるがね。私の経験ではそんなことは出来ないね。

追従課長: 部長のおっしゃる通り。まだまだ構想が甘いんだよ。

リーダー: 分かりました。この会議のルールは、対案・代案ルールとなっています。恐縮ですが、部長の対案・代案をお聞かせ頂けませんでしょうか?

否定語部長: えっ、そうだった!うーん仕方ないなぁ。販路開拓ルートが弱いのが問題だな。外部のパートナーとの連携が鍵だよ。

このようにすると、販路開拓の強化には外部パートナーとの連携という解決策が共有できる。

自分主語ルール

さらに次は「自分主語」ルールだ。否定語批評家の特徴は、「あいつはダメだ」といったように常に「他人主語」であることだ。これを「自分主語」に変えると、前述の販路開拓の強化、外部パートナーとの連携についても、相手でなく自分が何をするかで考えねばならない。

リーダー: 自分主語の対案・代案をお願いします。

部長  うーん、外部パートナーとの連携だが、私が課長時代に取引があったA社にコンタクトしてみよう。

リーダー: 課長の対案はいかがでしょうか?

追従課長: えっ!私は接点のあるB社にコンタクトしてみます。

リーダー: 解決策が見えてきました。ありがとうございます。

こうなると会議も建設的に終了するのである。

また意見を付箋にキーワードで書いて、ホワイトボードに張ってメンバーで共有するも効果的である。今はタブレット端末や電子黒板を活用して共有する方法もある。

要は言いっ放しにするから、言葉が宙に浮いて責任がなくなるのである。もし自分の発言を書いて全員が見えるようにすると、「出来っこない」、「摩擦を起こすのではないか」、「いかがなものか」という発言を張り出したらどうだろうか?

普通の感覚であればかなり恥ずかしく感じるものであり、結局、対案や代案を出さざるを得なくなる。

部長 :うーん、これを進めるのはいかがなものか?

追従課長: 部長のおっしゃる通りです。

リーダー: この会議はルールで発言は付箋に書いて頂いております。

部長・追従課長 :えっ!・・・・

リーダー :では対案・代案ルールで、皆さんのアイディアを書いてみましょう。

部長・追従課長: (渋々書き始める。)

ルールとなると人は動かざるを得ない。ちょっとした強制力が実は前向きな意見を生み出すきっかけとなる。

1年後は歴然の差

事業構想に関わる職場やチームの1年を考えてみよう。否定語・批評家語ばかりの職場と比べて、対案・代案を出すことを習慣づけている職場では、1年後の職場やチームの事業構想力の差は歴然である。

さて、皆さんの職場ではどうだろうか?





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