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腹を括った信念と緻密な準備



腹を括った信念と緻密な準備

第6回 やったもん負け症候群

やったもん負け症候群とは、新たな事業を始めた人が、やったもん勝ちにならず、失敗すると叩かれ、組織が縮み志向になる現象。ダメならクビにして下さいと言い切れる信念と緻密な準備がリーダーとしての使命。

 

「やったもん勝ち」という言葉がある。自らのアイディアで行動し、自らリスクを取って新たな市場を創った人が先行者利益を享受することだ。しかし最近職場で起こっているのが「やったもん負け」だ。せっかく始めた新規事業が少しつまづいただけで徹底的に叩かれ、それを見た周囲は新しい挑戦をするよりも、目の前のルーティンの仕事を手堅くこなす方がましだと、組織全体が縮み志向になる。こうした職場では事業構想は育たないし、イノベーションも起こらない。

「やったもん負け」だけでなく「言ったもん負け」もある。これは意見を言った人が、「じゃあ、お前がやれ」といきなり全て丸投げされ、全責任を負わされることだ。こうした職場も「余計なことは言わない方が良い」と会議では沈黙を守る人が増え、事業構想やイノベーションどころではない。

では、なぜ最近「やったもん負け症候群」が職場で蔓延しているのだろうか?

「やったもん勝ち」と「やったもん負け」の対比

過剰な管理志向

コンプライアンス、ISO、個人情報保護、製品安全、クレーム対応、管理部門が気にしなければならないことは山ほどある。管理部門は、まず否定から入る、支援するより却下する、難癖をつける傾向があるが、問題なのはそれを意地悪ではなく、職務に忠実がゆえに真面目に善意で行っていることが多いのも深刻な問題である。

延々と社内手続きに手間がかかったうえ、結局は、「前例がない」、「リスクが大きい」、「他部門と摩擦を生む」、「事業計画書を書き直せ」、「役員会議で説明せよ」と指摘され、何も進まずに今に至ることは枚挙に暇がない。

「むなしい」「むかつく」「むくわれない」というMで始まる3つの言葉は、やったもん負け症候群を象徴する3Mだ。

社内政治

第二の原因は、社内政治だ。特に政治力の強い役員や部長連中だ。彼らは何でも難癖をつける。新規事業が失敗すれば、「ほら俺の言った通りに失敗した」と得意になり、成功すれば「俺が指導してやったから成功したんだ」と得意になる。本当にたちが悪い存在だ。

そして挑戦者が始めた新規事業がうまく進み始めると社内政治を駆使して、急に首を突っ込み主導権を奪ってしまう。そして自分の息のかかった部下に担当をすり替え、自分の手柄にする。

世間で新製品の生みの親と言われる人が、実際は違うことが良くあるのは、真の生みの親が社内政治で駆逐されてしまうことによる。

事業構想とイノベーションは組織の成長に不可欠だ。挑戦者は応援されるべきであり、フロントランナーは正当に評価されるべきである。大体自ら行動せずリスクも取らない外野がガタガタ言うな!である。挑戦者が報われなければイノベーションは起きないのだ。では、職場にはびこる「やったもん負け症候群」をどのように解決すべきか。チェンジ・リーダーとして打つ手は何か?

本当に腹を括っているか?

筆者はこれまで、新規事業を成功させた人、失敗してしまった人の話を聞く機会が多くある。失敗した人の話の特徴は、時期が悪かった、社内の反対にあった、ライバルが現れた、ファイナンスがついてこなかったと出来なかった理由をあれこれ並べる。

一方で、成功した人の話は極めてシンプルだ。それは「この事業が出来なかったらクビにして下さいと上司に伝えました」と、「腹を括っていた」ことである。

事業構想を具体化に移すステージで、担当者の不安や自信の無さは、上司や部下、管理部門や役員に透けて見える。例えば社内でプロジェクトを説明する時に、ダメな例と突破できる説明の違いはこうだ。

 

ダメな例

  1. 担当者:「このプロジェクトはこうしたリスクがあり、ライバルはこうした動きをしています。やってみないと分かりません」

こうした説明すれば、説明を受ける方はその不安や自信の無さを感じて、幾らでも問題点を指摘してくる。

 

突破できる例

  1. 担当者:「このプロジェクトはこうしたリスクがあり、ライバルはこうした動きをしています。市場環境や競合動向など外部要因は常に変動しますが、主担当として絶対成功させます。ダメだったらクビにして下さい」

あれこれ言う管理部門や役員は、要は自分が責任を取りたくないのであり、全責任は自分が負うと言い切れば、それ以上言われないものだ。それだけ情熱を持ったプロジェクトなのか?ダメならクビにしてくれと言い切れるくらい準備した緻密な事業構想なのか?リーダーとして胸に手を当てて考えてほしい。

また、社外の力を使うことも大切である。「過剰な管理志向」や「社内政治」に対しては、社内の力学でも簡単に変わるものではない。チェンジ・リーダーは、社内でなく社外の力を使うべきである。プロジェクトに関わる社外の協力会社、アドバイスを受ける大学教授、メディア、SNSなど社外の声で「これは有望だ」と言わせるのだ。

本当に汗をかいている部下を分かっているか?

リーダーとしてプロジェクトチームの現場を正確に把握していることも重要である。それは、現場で一番汗かいている部下を本当に分かっているかということだ。プロジェクトが大きくなるとリーダーは最前線の状況まで把握するのが難しくなる。真の縁の下の力持ちは誰か、チームで一番信頼されているのは誰か、単に報告がうまい部下だけを評価していないか、部下をやったもん負けにしてはならない。

「やったもん負け」から「やったもん勝ち」に、挑戦者が応援され、フロントランナーが正当に評価される職場へ、チェンジ・リーダーが動くのだ。





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