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製造業へ華麗に転身したセイコーマート



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製造業へ華麗に転身したセイコーマート

北海道のコンビニエンスストア大手が、大胆な戦略転換に打って出た。高品質の地元食材を使ったPB商品を外部企業や海外に販売する。コンビニの成熟を見据え、食品製造や農業の領域にも一段と力を注ぐ。

(写真=船戸 俊一)

今年3月、関東にあるイオングループの「イオン」「マックスバリュ」の店頭に、大福の新商品が次々とお目見えした。ヨモギと粒あんを使った「草大福」、こしあんを使った「白大福」など味は4種類。商品のパッケージには北海道の地図が描かれ、その下に「北海道産もち米、小豆使用」という言葉が誇らしげに並ぶ。

関東のイオングループの店舗に供給する大福(上)。セイコーマート子会社の三栄製菓が製造元だ(下)(写真=2点:船戸 俊一)

この大福を製造する三栄製菓(札幌市)は、北海道のコンビニエンスストア大手、セイコーマート(札幌市)の子会社。大福は季節限定商品も含め、これまでは道内のセイコーマートのみで販売してきた。人気商品に育ったことから、道外で販売しても競争力は高いと判断。今年に入り本社工場を増床移転して供給体制を整え、道外に拡販する戦略商品の一つに据えた。

セイコーマートが道外で商品を売り込んでいるのは大福だけではない。子会社で製造したパスタやサンドイッチは北関東地盤のスーパー、ベイシアの店頭に並ぶ。別の子会社で製造したアイスモナカやメロンアイスを、神奈川県が地盤の中堅コンビニ、スリーエフに供給した実績もある。

会長自ら東京常駐に

セイコーマートは北海道とは対照的に人口が多く、肥沃な首都圏の市場を販売エリアに選んだ。首都圏(1都6県)の人口は約4200万人と北海道全体の7倍を超え、潜在需要は大きい。今年初めには東京・新橋に東京地区事務所を開設。実質的な創業者の赤尾昭彦会長が自ら東京に常駐し、市場調査や新規取引先の開拓に乗り出している。

矢継ぎ早に、道外での商品の製造販売を進めるセイコーマート。そこには激しさを増すコンビニ業界の競争の中で、既存の小売りビジネスだけを続けていては生き残れないとの危機感が背景にある。

業界では全店舗の売上高が4兆円を超えるセブン-イレブン・ジャパンが、圧倒的な1位の座にある。店舗数や1店舗当たりの1日の売り上げ(日販)で大きく引き離されている他社は、再編を通じて事業規模を拡大し、セブンに対抗しようと考えている。2位のローソンは昨年12月にポプラと資本業務提携した。スリーエフとも資本業務提携の交渉を進める。3位のファミリーマートは10月にココストアを完全子会社化し、今後吸収合併する予定。10月15日には4位のサークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングスとの経営統合の合意を発表した。

再編の荒波の中で独立系は残り少なくなった
●主な大手チェーンの2014年度の全店舗売上高
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コンビニ業界がセブン、ローソン、ファミマの3陣営にほぼ集約されつつある中で、セイコーマートは中堅以上のチェーンとしては残り少ない独立系の企業だ。同社は北海道にほぼ特化したコンビニの運営で大手チェーンの攻勢をはねのけ、現在は約1170店を展開。道内の店舗数シェアは37.5%とセブン(32.6%)を抑え、1位を守り続けている(こちらのグラフを参照)。

だが北海道は全国平均よりも早く人口減少が進み、コンビニの経営だけでは企業として成長し続けることは難しい。次の成長を模索する中で新たな柱と定めたのが、食品の製造事業だ。

赤尾会長は「メーカーは自分の工夫でいくらでも利益を出せる。メーカーへの移行は以前から考えていた」と話す。それも付加価値を重視し、北海道産食材を使った高品質の食品を、道外に売り込むというものだ。コンビニのPB(プライベートブランド)を出発点にしながらも、全く新しいメーカーの事業モデルを築こうとセイコーマートは模索している。

北海道産食品、海外へも

北海道産食品の売り先は国内にとどまらない。三栄製菓の大福は、9月にはタイのイオンの店舗に出荷。10月には同社のマレーシアの店舗にも出す予定だ。卵焼きと豆腐の製造子会社、北海千日(小樽市)が製造した卵料理を、米国のすし店に供給することも検討している。日本食ブームを追い風にしながら、品質の良さをアピールすれば、現地の需要をつかめるとみる。

コンビニの競争力を高めるために培ってきた食品メーカーとしての機能を活用して、道外の市場に挑戦する戦略だ。一連の取り組みが実を結び、製造部門の業績への貢献度は高まっている。グループ各社の税引き前利益の合計に占める割合を見ると、2012年度はコンビニ運営など小売部門が5割を超え、製造部門は17%だった。これが2015年度は小売部門35%、製造部門は32%になる見通し。製造部門の比率は年々上がっており、数年後には製造部門の利益額が小売部門を上回りそうだ。

食品製造と同様、セイコーマートの特徴である外食の機能も外部に切り出し、新たな事業に育てる。1つずつ鍋で作るカツ丼など、コンビニ店内で展開する人気コーナー、「ホットシェフ」を道外で出店する計画だ。

セイコーマートは2013年、ホットシェフのコーナーだけを切り出して、ベイシアグループの中堅コンビニ、セーブオンの群馬県の店舗内に出した。道外で、かつセイコーマートの店舗以外のホットシェフは初めてだ。

セイコーマートはホットシェフのサービスを1994年に開始した。鉄道の駅の減少や、郊外のショッピングセンター、高速道路のドライブインのフードコートなどとの競合で地域の食堂が姿を消すなか、代替する存在として北海道で支持を広げてきた。

魅力は店内調理で出来たての総菜や弁当を提供すること。品質を安定させるには従業員の教育が欠かせない。ホットシェフのスタッフは、セイコーマートの売り場スタッフとは別に採用する。店舗の開店前後の2週間をかけて集中的に研修し、どのスタッフがどの店で調理しても同じ品質や味になるよう、弁当や総菜の調理マニュアルを徹底的に覚え込ませる。開店後も本社ホットシェフ専門のスーパーバイザーが各店を定期的に巡回し、商品の品質が一定か、厳しくチェックする。

道内では現在100店に導入しているイートインのコーナーを、毎年100店以上のペースで増やす計画だ。座席数は数席の店もあるが、一部は30席程度と大幅に増やした店も用意する。ホットシェフの商品をその場で食べられるようにして販売を後押しする。

約20年の地道な取り組みでコンビニの集客の目玉に育ったホットシェフ。道外の小売り各社も注目しており、セーブオンのように導入に踏み切る企業が増える可能性がある。

食品メーカーや外食企業の機能に磨きをかけるため、セイコーマートは商流の最上流である食材の調達や生産にも力を注ぐ。SPA(製造小売業)としての事業モデルを追求する姿勢だ。

原料調達から商品販売まで一貫して手掛ける
●セイコーマートグループの事業領域と主な企業
川上・原料調達
  • ▶北栄ファーム(野菜の生産)
川中・食品加工
  • ▶北燦食品(総菜・サラダの商品開発・製造)
  • ▶丸吉梅沢製麺(調理麺の製造)
川下・小売り
  • ▶セイコーリテールサービス
    (コンビニ直営店の運営)

2007年に北海道で農業生産法人の北栄ファーム(滝川市)を、生産者との共同出資で設立した。それまでは一部の野菜を九州から仕入れていたが、農業生産法人を通じて、野菜をより新鮮な状態で調達できるようになった。取り組みを始めてから8年、グループで使う野菜の自給率は22%に高まった。

道内の主要6漁港でセリ権を持ち、仲卸業者を介さずに水産物を直接仕入れる体制も整えている。こうしてグループで使う水産物の7割強を、価格を抑えながら直接購入している。セイコーマートのグループ会社は26社ある。17の食品工場、農業生産法人など、SPAモデルを支える多様な機能をそれぞれが担っている。

コンビニ店舗は過疎地で強み

セイコーマートが店舗数で北海道トップなのはこれまでに紹介した通りだが、その強さは、過疎地ほど際立つ。

セイコーマートは過疎地で圧倒的な店舗網を持つ
●大手コンビニチェーンの北海道での店舗シェア
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上のグラフのように、札幌市内の店舗数ベースでのシェアは31.0%とセブン(30.1%)とほぼ拮抗するが、人口3000人以下の31町村に限ると、店舗数シェアは8割を超える。ファミリーマートやサンクスが1店も出していないのに比べて、その差は歴然だ。

なぜ過疎化が進む地域でも、セイコーマートは店舗を運営できるのか。

札幌市から北東に約160km。北端の都市、稚内市に向かう国道に面した初山別村で昨年12月、村内初のセイコーマートがオープンした。周辺で唯一あった小売店が閉店し、宮本憲幸村長が同社に何度も出店を頼み込んだ。

商圏人口は900人ほどだが、村民に頻繁に来てもらえる店をつくれば採算に乗ると判断。食品に加え日用品なども充実した売り場構成にして、出店に踏み切った。食品だけでなく生活に必要な品を1カ所でそろえる「小さな総合店」をつくる戦略だ。

人口が少なくても、例えば顧客の来店頻度が2~3日に1回から、毎日へと上がれば、売上高は伸ばせるという考え方が根底にある。初山別村のように過疎地への出店を着々と進め、179ある北海道の市町村で、セイコーマートが出店していないのは神恵内村、月形町など4自治体しかない。

大手コンビニチェーンとのもう一つの決定的な違いは、直営店舗の多さだ。セイコーマートは1971年の1号店開店からしばらくは、地域の酒販店が次々とコンビニに業態転換し、FC(フランチャイズチェーン)方式で店舗数を増やした。だがFCオーナーの高齢化が進み、後継者不足に悩むオーナーも増えている。全国で次第に深刻になっているコンビニFCの担い手不足が、北海道では先行して表れた格好だ。

そこで同社は、FC中心というコンビニの事業モデルから決別し、FCだった店舗を順次直営に切り替えてきた。現在の直営店比率は約7割に上る。

もちろん直営店への転換は本部コストの増加要因になるが、メリットも大きい。店舗の運営が標準化しやすくなったほか、他社が入ってきにくいように地域に集中出店するドミナント(地域集中)戦略など、本部の施策を素早く反映できる。過疎地という難しい場所も直営なら出しやすい。今後は既存のFC店は残すものの、新規出店は直営主体で進める。

セイコーマートは工場や店舗が、過疎地も含めて広大な北海道の全域に広がる。独特の事業モデルを支えるには、優れた物流体制も不可欠だ。調達した食材を新鮮な状態で加工し、手ごろな価格で販売するため、長年かけて効率的な配送網を自社で築いてきた。

札幌配送センターの外観(下)。倉庫管理システムで商品の位置を的確に把握(上)する。パンの自動仕分け機(中)などの設備も活躍(写真=3点:船戸 俊一)

札幌市東部。配送と商品調達の関連会社、セイコーフレッシュフーズの札幌配送センターでは、ダンボール詰めされた様々な商品が無駄なく運ばれる。

ここで活躍するのが、2011年、米国のシステム会社から導入した倉庫管理システム。センターで扱う商品の銘柄や数量、賞味期限や倉庫内の所在地などを詳しく把握するものだ。貼り付けられたバーコードを読み取り機でスキャンすると、センター内でその商品がどのような作業工程に入っているのかを瞬時に知ることができる。

セイコーマートではこのほか、配送トラックの運行状況を随時把握し、効率的なルートを計算するシステムも導入している。配送センターを出たトラックが商品を各店に届け、帰り道に周辺の工場から商品を集めてセンターに戻るといった工夫でトラックが空になる状態を防ぎ、物流コストを抑制している。2013年には商品の在庫数量に応じた自動発注システムも導入し、サプライチェーンをさらに効率化している。

セブンに対抗、自主独立を貫く

冒頭で紹介したように、コンビニ業界は大手3陣営に集約されつつある。

その中で自主独立を貫くセイコーマート。だが実は、大手商社と緩やかな資本関係を築いてきた歴史もある。2002年、三菱商事がセイコーマート本体に出資した。伊藤忠商事は同年に、グループ会社の丸ヨ西尾(現セイコーフレッシュフーズ)、続いて2005年にはセイコーマート本体にも出資した。比率はそれぞれ数%程度のもよう。比率を抑え一社の出資を突出させず、特定の系列には属していないことを対外的に示す。

三菱商事はローソン、伊藤忠はファミマの筆頭株主。ファミマとは2006年に共同出資会社の北海道ファミリーマートを設立した。今年3月に関係を解消するまで、ファミリーマートブランドで店舗を展開してきた。

セイコーマートは北海道でも急速に勢力を拡大するセブンへの強烈な対抗意識を持つ。社内関係者によると、赤尾会長は競合コンビニの中でも唯一、セブンの店舗には足を踏み入れないようにしているという。「セブンと同じことをしたら負ける」が持論だ。ホットシェフや過疎地への出店など、既存のコンビニモデルへの挑戦は、セブン対抗を強く意識したものだろう。 セイコーマートは非上場で連結決算を作成していない。商品の企画料やコンビニFC店のロイヤルティー収入はセイコーマート、直営店の売り上げは子会社のセイコーリテールサービスに計上するなど会計処理も複雑。「グループ各社は全て黒字」(広報担当)というが、全体の収益力は把握できない。

赤尾会長ら役員と従業員持ち株会を合わせたセイコーマート株式の保有比率は5割を超えるといい、他社から買収されるリスクは低い。ただ競争が激化するコンビニ業界で、安定した収益を出し続けられる保証はない。セイコーマートは北海道産食品の製造販売など付加価値の高い製造業への転換で生き残りを目指し、業界の再編劇とは一線を画そうとしている。

※セイコーマートの実質的な創業者であり、大胆な業態転換を牽引するセイコーマート・赤尾昭彦会長へのインタビュー「『気づいたらコンビニではなかった』を目指す」も掲載しています。併せてお読みください。





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