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「炎上」が暴いたDeNA劣悪メディアの仕掛け なぜニセ情報が大量の読者を獲得したのか



これまでの経緯

 

「炎上」が暴いたDeNA劣悪メディアの仕掛け
なぜニセ情報が大量の読者を獲得したのか
2016年11月30日

img_4fb983080ecd10d1b7aa58b9235fcf26157066DeNAのモラルが問われている(撮影:梅谷秀司)

DeNAは、同社が運営する医療健康情報サイトの「ウェルク(WELQ)」に掲載されているすべての記事をいったん非公開にすると11月29日21時に発表した。

人間の健康、あるいは生死にさえかかわるヘルスケア情報について、誤った情報を大量発信しているとして医師が運営するブログをはじめ、多方面からの非難を受け、DeNAは11月25日に「【お知らせ】「専門家による記事確認」および「記事内容に関する通報フォームの設置」について」という発表を行い、薬機法等法令違反に対する専門家による監修を依頼したと発表していた。

この発表を受けて、筆者はDeNAに以下のような質問を投げていた。

すべての記事について再監修

・執筆者によって「医療関係スタッフが執筆していないだけでなく、専門家による記事の妥当性確認も行っていなかった」との告発があるが、事実なのか
・専門家による妥当性確認チームは、どのような資格を持つ人が、何人のチームで編成されるのか
・DeNAパレットのウェルク以外の情報サイトについて品質面の見直しを行う予定はあるか
・DeNAパレットの各サイトは品質管理されていない低廉な記事を大量に用意し、SEOによってアクセスを誘導。広告価値を高めることで経済的価値を高めるビジネスモデルという認識は正しいか
・ウェルクの執筆者マニュアルには他サイトから記事内の実データや論旨を複写したうえでリライトすることを推奨する内容が含まれていた。またネット検索で合法的に写真を流用する手法が細かく書かれていたが、これはDeNAが作成したもので間違いないか

DeNAは「医学的知見を有した専門家による監修がなされていない記事が公開されていた」と認めており、すべての記事について再監修を行うという。またDeNAパレット(キュレーションプラットフォーム事業のブランド名)が運営するウェルク以外の各サイトについても、守安功社長兼CEOを座長とする管理委員会を設けて改善を行うとのことだ。一方、事業モデルに関する質問への回答はなかった。

ただし、ウェルクの事業モデルの裏側については記事執筆経験者による告発なども行われている。今後、明らかにされていくことも多いだろう。

医師が運営するブログをみても、誤りが患者の不安を煽っているとの非難の声があがっていた。”胃がん”で検索すると「胃がんは、胃にできる悪性腫瘍で日本では肺がんに次いで死亡率の高いがんだといわれており、男女比は2対1と男性に多く、男女とも60代で一番多く発症しているといわれています」といった記事が、グーグル検索の第1位に表示されていたが、実際には肺がんに比べて遙かに”死亡率が低い”がんだ。

すでに多くの誤りが指摘されており、本記事でそのひとつひとつに言及することはしない。なぜ筆者がこの問題を取り上げたかといえば、DeNAが「ポスト・ソシャゲー」時代における収益の柱のひとつとしているメディア事業全体に大きな疑問を投げかけるものだからだ。さらにいえばプロ野球の球団を持つほどの大企業が、利益のためにどこまでやっていいのかというモラルを問う事例でもあるからだ。

なぜ誤った記事をバラ撒くようになったのか

ウェルクは、DeNAが新たな事業の柱として期待するメディア事業「DeNAパレット」の一部。ウェルクと同様の手法は他の9つの媒体でも使われている。このうちウェルクは2015年10月、DeNAパレットに追加される形で加わった「ココロとカラダの教科書」を標榜するヘルスケア情報サイトだ。

元はDeNAライフサイエンスが運営していた医療と健康に関する情報を発信する情報サイトで、品質に問題がある記事を掲載するサイトではなかった。ところが、DeNAパレットに組み込まれると、あっという間にアクセス数を延ばし、半年で月間アクセスユーザー数が600万人にまで達したというのだからすさまじい。

ウェルクには毎日約100本の記事が掲載され、それぞれの原稿は2000文字以上、1000円の報酬が執筆者には与えられていた。多くはクラウド人材サービスで調達した執筆者で、医療機関での就業経験や資格などは必要なく、執筆したヘルスケア情報の事実関係に関する質問や修正が執筆者に依頼されることもなかったという。

それだけ多くの読者に、自身や家族、友人知人の健康に関する心配事について、誤った知識をバラ撒いていたのであれば、それが他サイトからの転載に近い「パクリ記事」であれ、オリジナルで書き起こしたものであれ、大きな問題だ。

なぜ、このような問題サイトが生まれたのだろうか。それを考えるには、まず「なぜウェルクのアクセス数は急伸したのか」を考える必要がある。

ウェルクという情報サイトのブランドを聞いたのは、今回が初めてという人も少なくないだろう。それもそのはずで、ウェルクは利用者数こそ多いが、情報発信ポータルとしては決して人気サイトではない。

ウェルクの本質は、検索エンジン(具体的にはグーグル)のネット検索アルゴリズムを徹底的に研究し、そのクセを”悪用”している点にある。多くの人が興味を持つ検索キーワードに対して、真っ先に自社の記事が掲出されるように仕込み、多くの読者にクリックさせる仕組みだ。

DeNAパレットのサイト紹介にも書かれているとおり、DeNAはスマートフォンの普及によって、日常に溶け込んだ「インターネット情報アクセス」という行動に対して、普遍的にアクセスされるだろうテーマを選び、10のメディアを運営している。

そのいずれもが、ウェルクと同じ手法で立ち上げられている。アクセスを集め、まったく品質管理されていない低廉な記事を大量に投入することで広告価値を高めてマネタイズする仕掛けだ。ひたすらに検索エンジンを”騙し”、その結果として莫大なアクセス数を得てマネタイズ効率を上げていこうという思想が前面に出ている。

前述したように、DeNAは守安社長を中心とした管理委員会で品質改善に取り組むという。この管理委員会による改革に期待したいところだが、問題の根は深く、それほど簡単ではないだろう。

たとえばグルメ情報などの発注要領では、執筆者へのメール内容から”グルメサイトの検索結果などからコピーしたお店の紹介リストをコピペする方法”を推奨。その報酬額としては1件約100円しか設定されていなかった。それらの情報をとりまとめる編集者への報酬と合わせても175円。他サイトからの文章やアイデアの盗用を推奨することなく、これだけ低廉な価格での記事は製作できないからだ。

DeNAパレットの中でも事業的に成功している媒体(MERY、Find Travel)でも、記事内容や使用する写真盗用、記事の品質に対する疑問の声が挙がっている。ウェルク問題が大きくなったことで、今後はすべてのDeNAパレット媒体に疑いの目が向けられるだろう。

新たな価値創造をする意識が見えない

さて、「そうは言っても、エンターテインメントなのだから、面白くて役立つ情報であればいいではないか」「人の生き死ににかかわる問題サイトだけを閉じれば炎上は止まる。それほど大きな問題ではない」という意見もあるだろう。

筆者もウェルク問題が長期間、炎上し続けるとは考えていない。すでにいったん全記事を非公開にもしている。今後、問題記事を除去し、品質を高める努力をすれば、あっという間に鎮火して話題に上らなくなると考えている。

しかし、前述のとおり、DeNAパレットの手法には根本的な危うさが感じられる。

DeNAパレットは2014年10月にスタートして2年あまりになるが、同社によると月間アクセスユーザー数はプラットフォーム全体で5000万を超えるという。彼らはこの数字と主力2媒体(MERY、Find Travel)の実績を元にメディア事業の健全さを訴求してきた。

ところが、すべての媒体に共通することだが、新たな価値創造をしようという意識が見えない。これが単なる印象やイメージだけではないと筆者が考える理由は、その運営体制にある。クラウドソーシング企業を使い、極めて低い金額で、専門知識を持たない執筆者に、内容も品質も丸投げにしているからだ。

DeNAパレットは、どの媒体も会員登録した投稿者による記事と運営側が作成した記事で構成されている。運営側が作成したオリジナル記事をフロントページでは見せつつ、投稿者の(品質は確認されていない)大量の記事でアクセス数を稼ぐスタイルで、企業からのPR記事などタイアップも進んでいる。その際に「5000万」という月間アクセスユーザー数はマネタイズの大きな武器になってきた。

今後、広告主が重視しなければならないのは5000万の中身だ。この読者は、DeNAパレットが展開する各媒体を信頼したうえで記事を読んでいるわけではない。その多くは、グーグルを”騙した”結果、集められてきた読者である。

アドネットワークからの収益により短期的な成長を演出できたとしても、このようなサイトに高額な広告料を支払ってブランドイメージを預ける企業はどれだけ現れるだろうか。一時的に出稿したとしても、いずれはリスクを避けるためパートナーを降りるだろう。

失った信用を回復するためには、抜本的な事業体制の見直しが必要になる。DeNAパレットは、メディアとしてもっとも重視しなければならない「読者の信頼」を軽視してきた。今後、読者を重視するサービスへと事業モデルを組み立て直すには、相応の投資が必要だ。その覚悟が、DeNAにあるのだろうか。

グーグルにも問題がある

もっとも、筆者がガッカリしているのはDeNAに対してだけではない。グーグルに対してもだ。ある意味、DeNAパレットのような事業モデルを生み出したのはグーグルであるからだ。

今回の問題は、世界でもっとも多く使われており、もっとも洗練されているとみられている検索エンジンでさえ、簡単に騙されて誤った情報を上位に集中させることが可能であることを示している。しかも、人の生死や健康に関わる情報でさえも、である。

検索エンジンは、インターネットに点在する大量の情報への動線であり、道しるべである。だからこそ、グーグルはズルをする情報発信者を除外する措置を常に行ってきた。その手法は、”グーグル八分”と呼ばれる「無実なのに検索対象から外され、復帰の手立てがない」状況を生み出し、時に小さくも新しい事業の芽を摘んでしまうこともあった。

ところが、その一方で検索エンジンを騙すノウハウを持ち、短期間に大量のコンテンツを投入する事業者が出現すれば、あっという間に情報閲覧順位が操作されてしまうことも証明された。生死や健康にかかわる問題への情報操作にさえ、グーグルが無力な存在であることが明らかになった事件とも言える。

今回の問題でグーグルが目を覚まし、悪質な情報発信サイトに対して現実的な対策を打つこと、そしてルール作りへとつなげていくことを望みたいものだ。





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